ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:321

rofecoxibによる心血管毒性は投与中止後も持続

シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の選択的阻害薬であるrofecoxib(商品名:Vioxx)の大腸腺腫性ポリープに対する有効性を検討したAPPROVe(Adenomatous Polyp Prevention on Vioxx)試験の最終解析において、心血管イベントの発生リスクが約1.8倍に上昇した状態が、同薬剤の投与中止後少なくとも1年間は持続することがわかった。アメリカ・Dartmouth医科大学地域・家庭医療学のJohn A Baron氏が、Lancet誌2008年11月15日号(オンライン版2008年10月14日号)で報告した。

重度強迫性障害への視床下核電気刺激療法は副作用に注意

重度難治性の強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)は、強迫観念や強迫行為、儀式行為などによる時間の浪費、閉じこもりなどによって生活が困難になるといった特性が見られる疾患である。このOCDの治療の選択肢として近年、行動療法や薬物治療とならんで、パーキンソン病による運動障害の治療法として有用性が確認されている視床下核への電気刺激療法が提唱されている。その有効性と安全性に関する臨床試験を行った、フランス国立衛生研究所(INSERM)のLuc Mallet氏らSTOC研究グループによる結果が、NEJM誌2008年11月13日号に掲載された。

BMIに加え腹囲、ウエスト・ヒップ比も

肥満と死亡リスクの関連を評価する際、従来の研究では主に身長と体重から算出するBMIに依り、体脂肪の分布はほとんど検討されていない。しかし臀大腿部肥満よりも腹部肥満のほうが慢性疾患リスクと密接に関連し、腹囲あるいはウエスト・ヒップ比がBMIよりも予測因子として優れている可能性が示唆されてもいる。そこで、独Institute of Human NutritionのT. Pischon氏らは、欧州における癌と栄養に関する大規模な前向き調査(EPIC)参加者を対象に、BMIに腹囲、生活習慣などを加え死亡率との関係について分析を行った。NEJM誌2008年11月13日号掲載より。

2型糖尿病日本人患者への低用量アスピリン投与:JPAD報告

2型糖尿病患者に対し低用量アスピリンを投与しても、アテローム性動脈硬化症イベントの発症予防には効果が認められない。これは熊本大学大学院循環器病態学教授の小川久雄氏らが行った、日本人2型糖尿病患者2,539人を対象とするJapanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes(JPAD)の研究結果で、JAMA誌11月12日号(オンライン版2008年11月9日号)で公表された。低用量アスピリンのアテローム性動脈硬化症イベントの予防効果について、2型糖尿病患者を対象に行った研究は珍しい。

ビタミンE・Cどちらも心血管疾患予防(50歳以上男性)に効果なし

50歳以上の男性に対して、ビタミンEやビタミンCを投与しても、心血管疾患イベントの予防には効果がないようだ。米Harvard大学医学部のHoward D. Sesso氏らが、約1万5,000人の男性医師を対象にした大規模試験「Physicians’ Health Study II」で明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月12日号(オンライン版2008年11月9日号)で発表した。これまでに、ビタミンEやCが心血管疾患予防に効果があることを示した研究はあるが、元々リスクの低い男性を対象にした長期の研究結果は珍しい。

プラセボ処方は日常的:米国の内科医、リウマチ医対象調査

アメリカの臨床現場ではプラセボ処方は日常的に行われており、処方する医師は倫理的に特に問題はないと考えている実態が、NIHのJon C Tilburt氏らによって報告された。内科医およびリウマチ医各600人ずつ計1,200人を対象に、プラセボ処方の状況と、処方する医師の意識、態度について、メールアンケートで行われた調査の結果による。BMJ誌2008年11月8日号(オンライン版2008年10月23日号)より。

緑豊かな地域の住民は健康格差が小さい?

最も緑が豊富な環境に居住する住民は、所得の差に基づく健康上の格差が最も小さいことが、イギリス・Glasgow大学公衆衛生・健康政策学のRichard Mitchell氏らの検討で判明した。緑豊かな自然環境に触れることは、健康および健康関連行動に独立の効果を及ぼすことが示されている。そこで、同氏らは「緑に触れる機会の多い環境は、社会経済的な地位の低さに起因する罹病の過程に影響を及ぼし、それゆえ所得差による健康上の不平等はその居住地域の緑が豊かであるほど目立たなくなるのではないか」との仮説のもとに調査を行った。Lancet誌2008年11月8日号掲載の報告。

社会政策の寛容性が、幼児死亡率、高齢者超過死亡率を改善

 保健医療においては、社会政策をいかに制度設計するかとともに、どの程度の寛容性をもたせるかが重要なことが、北欧で実施されたNEWS(Nordic experience of welfare states and public health)プロジェクトの解析結果により明らかとなった。保健医療に関する重要な社会的決定要因の多くは社会政策の中心をなすものでもある。高所得国はいずれも社会保障プログラムを持つが、その制度設計や寛容性には国によって明確な違いが見られ、これらの差は特に子どもや高齢者の貧困率の各国間のばらつきにおいて明らかだという。スウェーデン・Stockholm 大学/カロリンスカ研究所医療公平化研究センターのOlle Lundberg氏が、Lancet誌2008年11月8日号で報告した。

乳幼児期のタバコの副流煙は喘息の早期発症を増大

大規模な家族ベースの遺伝子解析データをもとに、遺伝子変異と喘息との関連、さらにタバコの副流煙曝露との関連について検証していた、フランス国立医学衛生研究所Emmanuelle Bouzigon氏らのグループは、変異遺伝子の喘息発症リスクは早期発症に限定されること、またその場合、乳幼児期の喫煙曝露がリスクを増大することを明らかにした。NEJM誌2008年11月6日号(オンライン版2008年10月15日号)より。

心筋梗塞発症後の冠動脈疾患による突然死、過去30年で大幅に減少

心筋梗塞発症後の、冠動脈疾患による突然死は、過去30年間で大幅に減少しているようだ。米Veterans Affairs Medical Center(ミネソタ州ミネアポリス)のA. Selcuk Adabag氏らが、約3,000人の心筋梗塞を発症した患者を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月5日号で発表された。また、同突然死のリスクは、心筋梗塞発症後30日間に最も大きく、さらに心不全が突然死のリスクを増加することもわかった。

電子カルテ共有システム、次なる段階への教え:英国

1998年にブレア首相が表明したビジョンを受けて、英国ではNHS(National Health Service)スタッフから患者までが共有可能な、国家規模の電子カルテ共有システムの構築が進んでいる。このシステムのポイントの1つに、SCR(summary care record)と呼ばれる開業医からの診療記録の抽出・電子化サマリーのデータベース化がある。SCRは患者の同意を得てアップロードされることになっており、2007年春から本格的にその作業が開始された。ロンドン大学Trisha Greenhalgh氏らは、このシステム稼働導入期(2007年5月~2008年4月)の実態を調査することで、今後のシステム展開への教えを見いだす事例評価研究を行った。BMJ誌2008年11月1日号(オンライン版2008年10月23日号)より。

ビタミンEには心血管イベントの予防効果はない

 アスピリン、抗酸化サプリメントを、単独もしくは組み合わせて服用しても、心血管イベントの減少には結びつかないことが報告された。スコットランドの16病院・188開業医グループが参加して行われたPOPADAD試験(prevention of progression of arterial disease and diabetes trial)からの報告。BMJ誌2008年11月1日号(オンライン版2008年10月16日号)にて掲載された。

WHO予算配分は感染症に偏りすぎ:バマコ2008会議に向けて

WHOの予算配分は感染症に極端に偏っており、世界的な疾病負担にも不均衡が見られるため、その是正に向けた検討が必要であることが、WHOの一般公開データの解析で明らかとなった。2008年11月、各国の保健相、支援機関、慈善活動家、国際機関らがマリ共和国の首都バマコに参集し、以前の協議で設定されたWHOの通常予算あるいは特別予算の医療優先事項の再評価を行うという。そこで、イギリス・Oxford大学社会学科のDavid Stuckler氏らは、WHOの予算枠内で以前の決定事項の優先順位をどのように改善できるかを検討した。Lancet誌2008年11月1日号掲載の報告。

マラリアの疾病負担が大幅に軽減、西アフリカ・ガンビアの場合

西アフリカのガンビアでは、近年の国際的な取り組みによりマラリアの疾病負担が大幅に軽減されていることが、同国医療研究評議会研究所のSerign J Ceesay氏らが行った調査で確認された。マラリアはアフリカにおける主要疾患であり最大の死因でもある。同国では、マラリア管理の国際的な取り組みや財政支援が強化され、2003年以降、妊婦や5歳以下の子どもに対する介入が増加しているという。Lancet誌2008年11月1日号掲載の報告。

出生体重1,000g未満児への光線療法は慎重に

超低出生体重児(1,000g未満)が来しやすい高ビリルビン血症を予防するため、積極的光線療法を行っても従来型光線療法と効果は変わらず、501~750g出生体重児では死亡率が増大し、むしろベネフィットを相殺してしまうことが報告された。光線療法の有害性について検証していたテキサス大学メディカルスクールBrenda H. Morris氏らによる。NEJM誌2008年10月30日号にて掲載された。

出生体重1,500g未満児への早期インスリン治療介入は無益

極低出生体重児(1,500g未満)への早期インスリン治療介入は、高血糖症を減らすが低血糖症を増大する可能性が高く「臨床ベネフィットはない」とする報告が、ケンブリッジ大学のKathryn Beardsall氏らによって寄せられた。パイロットスタディ「ヨーロッパ新生児インスリン補完療法(Neonatal Insulin Replacement Therapy in Europe:NIRTURE)」の結果より。極低出生体重児の高血糖症の発病率は高度(20~86%)で、罹患率、死亡率ともに高い。またそれゆえ、早期のインスリン治療介入による臨床ベネフィットが期待されてもいた。NEJM誌2008年10月30日号にて掲載。

親に医療保険がありながら子どもが無保険の割合は3%:米国

米国で、少なくとも片方の親が医療保険に加入している場合でも、その子ども(19歳未満)の約3.3%(95%信頼区間:3.0~3.6)が無保険であることがわかった。これは、米国Oregon Health and Science大学のJennifer E. DeVoe氏らが、2002~2005年の全米の医療費に関するデータベース、Medical Expenditure Panel Survey(MEPS)の約4万人について、横断研究を行い明らかにしたもの。これまでの研究で、親が無保険の場合に、子どもが無保険になる割合が極めて高いことは知られているが、親に保険がある場合に子どもが無保険である割合についての研究は珍しい。JAMA誌2008年10月22日号より。