ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:342

子宮摘出術の安易な第一選択は避けるべき

機能性子宮出血、平滑筋腫など良性疾患に対する治療法としては、子宮摘出術が優先的に行われている。しかし一方で、断定的ではないものの子宮摘出による下部尿路へのリスク増加が指摘されてきた。 スウェーデン、カロリンスカ研究所(ストックホルム)のDaniel Altman氏らは、スウェーデン国内女性を対象に、子宮摘出後の腹圧性尿失禁手術のリスクを調査。結果がLANCET誌10月27日号で報告された。

インスリン療法の追加はどのタイプが適切なのか?

2型糖尿病患者で経口糖尿病薬による血糖コントロールが不十分になると、インスリンが追加されることは一般的である。しかし、どのようなインスリン療法が適切なのか、これまで大規模な調査は行われておらずエビデンスに限界があった。 そこでオックスフォード大学(英国)チャーチル病院糖尿病センターのRury R. Holman氏ら4T(Treating to Target in Type 2 Diabetes)研究グループが、多施設共同非盲検対照試験を実施。NEJM誌オンライン版9月21日付、本誌10月25日号で結果が掲載された。

頭頸部扁平上皮癌の導入化学療法に関する第3相無作為化試験

頭頸部扁平上皮癌はアメリカでは、成人で新たに癌と診断される者のうちの5%を、世界的には8%を占め、初期ステージでは根治も期待される疾患である。標準治療は化学療法(手術+放射線療法)だが、最適な治療スケジュールが確立しておらず、薬物療法+放射線療法の導入化学療法が実質的に標準治療となっている。薬物療法ではシスプラチン+フルオロウラシル(PF)療法が、局所進行例での有益性から標準とされているが、ドセタキセル(タキソール)を加えたTPF療法の有益性に関する臨床試験が進行中である。その第3相無作為化試験の結果がNEJM誌10月25日号に掲載された。

国連ミレニアム開発目標を達成するための効果的な介入方法

国連ミレニアム開発目標(MDGs)は、世界的に重大な貧困、健康および持続的な諸問題に関して具体的目標を立て2015年までに達成するというものである。しかし現状では目標日時までの達成は非常に難しいことがわかってきており、目標達成のための計画および資源配分を効果的に行い、1つの介入で複数のMDG達成に寄与できないかが検討課題となっている。 ハーバード大学(アメリカ)Initiative for Global HealthのEmmanuela Gakidou氏らは、環境および栄養改善を目標とするMDGsへの介入の、乳幼児死亡率低下への寄与、および介入対象が置かれている経済状況によっての差異などを調査し、より有効な介入のあり方について検討を行った。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。

健康・福祉サービスの充足は受給者の「権利」認識不足解消から

発展途上国の中でも特に社会・経済的地位の低い人々が、権利として与えられているはずの健康・福祉サービスを十分に受け取ることができていないのは、そもそもサービスを受け取れるという認識不足が原因ではないか。世界銀行(アメリカ・ワシントン)南アジア人財開発部門のPriyanka Pandey氏らは、世界でアフリカ・サハラ以南に次いで貧困層が多いインド(全人口の35%が1日1ドル未満で暮らす)を対象に、情報資源に乏しい農村部の人々に情報をもたらすことで、どれぐらいサービス送達量に変化が生じるのかを調査した。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。

人工膝関節形成術後の運動物理療法は短期的ベネフィットもたらす

イギリスでは、変形性関節症(OA)は高齢者における身体機能障害の最大の原因であり、55歳以上の10%が疼痛を伴うOAに罹患しているという。OAに対する整形外科的な処置は一般に人工膝関節形成術が行われるが、術後退院しての物理療法をルーチンに行うアプローチの可否は不明である。 バーミンガム大学プライマリケア/一般診療科のCatherine J Minns Lowe氏らは、初回の待機的人工膝関節形成術施行後のOA患者における運動に基づく物理療法の効果について検討を行った。BMJ誌9月20日付オンライン版、10月20日付本誌掲載の報告。

アマチュアボクシングは慢性外傷性脳損傷のリスクを増大させるか

アマチュアボクシングは、イギリスでは男女を問わず人気の高いスポーツで、特に大学生の参加人口が増加している。一方、その安全性については相反する主張があり、アマチュアボクシングと慢性外傷性脳損傷の関連性は明確でない。 Northwick Park病院オリンピック医学研究所(イギリス、Harrow)のMike Loosemore氏らは、アマチュアボクシングにおける慢性外傷性脳損傷のリスクを評価する目的で系統的レビューを行った。BMJ誌10月4日付オンライン版、10月20日付本誌掲載の報告。

即時の治療開始でその後の脳卒中80%減少:EXPRESS研究

一般医の診断により一過性脳虚血(TIA)や軽度脳卒中が疑われた場合、専門医による治療が即刻開始されれば、受診待ちをするよりも80%、その後の脳卒中発症を抑制しうることが明らかになった。EXPRESS(Early use of Existing Preventive Strategies for Stroke)研究グループを代表してPeter M Rothwell氏らが、Lancet誌10月20日号で報告した。

IL-4変異体pitrakinraの吸入治療が喘息症状を著明に改善

喘息に関連するアレルギー性炎症反応においては、インターロイキン(IL)-4、IL-13などの2型ヘルパーT(Th2)細胞由来のサイトカインが重要な役割を果たすことが示唆されているが、現在までに臨床的なエビデンスは示されてない。遺伝子組み換えヒトIL-4変異体pitrakinra(Aerovant)は、IL-4Rα受容体複合体を競合的に阻害することでIL-4とIL-13の両方の作用を抑制し、Th2細胞系のアレルギー性炎症反応を防止するという。 ピッツバーグ大学呼吸器・アレルギー・救急救命医療部(アメリカ)のSally Wenzel氏らは、pitrakinraの有効性を検討する2つの小規模な二重盲検プラセボ対照パラレルグループ無作為化第IIa相試験を行った。10月20日付Lancet誌掲載の報告。

HPV+Pap検査は過剰診断ではない

女性の主要な死因である子宮頸癌の主な原因にヒトパピローマウイルス(HPV)がある。HPV検査に基づく子宮頸癌スクリーニングは、グレード2や3といった高度の頸部上皮内異常増殖の検出感度を高めるが、それは過剰診断なのか、あるいはグレードが高い頸部上皮異常増殖および子宮頸癌の予防に寄与するものなのか、明らかとはなっていない。 ランド大学(スウェーデン)Malmo大学病院のPontus Naucler氏らは、縦断的なコホート研究では、HPV検査と細胞学的検査であるパパニコロー(Pap)検査とを合わせて行うほうがより検出感度が高いと報告されていること、米国ではHPV検査はPap検査の補助的手段と位置付けられているといったことを踏まえ、HPV検査+Pap検査群とPap検査単独群との比較を行った。NEJM誌10月18日号より。

ベル麻痺患者の早期治療で抗ウイルス剤治療は「?」

コルチコステロイドと抗ウイルス剤は特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の早期治療に広く使われている。しかしその効果は明確ではない。 ダンディ大学(英国)プライマリケア・スコットランド校のFrank M. Sullivan氏らは、症状発現後72時間以内に集められたベル麻痺患者を対照とする二重盲検プラセボ対照無作為化要因試験を実施した。NEJM誌10月18日号掲載報告から。

小児急性中耳炎原因菌に多剤耐性菌が出現

7価を有する複合ワクチン(PCV7)には含まれておらず、小児の急性中耳炎(AOM)を引き起こす原因となる肺炎球菌に、多剤耐性菌出現の可能性が懸念されている。 アメリカ・ロチェスター大学小児科のMichael E. Pichichero氏らは、AOMに罹患した患児の原因肺炎球菌の抗原型を調べ、その抗生物質感受性を調査した。JAMA誌10月17日号より。

MRSA感染は院内ではなく公衆衛生問題

米国疾病管理予防センター(CDC)のメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)研究者チームによって行われた本研究は、MRSA感染症の疫学的状況を正確に把握することで、必要に応じ新たな予防対策を講じることを目的としたものである。 従来は病院発症、院内感染ばかりが注目されていたが、ER(救急救命室)受け入れ患者の感染症の原因として最も多いのがMRSAであるなど疫学的変化が起きており、コミュニティを対象とする調査の必要性が提起されていた。JAMA誌10月17日号報告より。

イギリスの病院データ(HES)は先天性心疾患術後30日死亡率の評価には不十分

イギリスのhospital episode statistics(HES)は、病院の活動、死亡率などを施設間で比較する際に用いられる統計データであるが、その信頼性は疑問視されてきた。オックスフォードRadcliffe病院心臓外科のStephen Westaby氏らは、子どもの先天性心疾患開胸手術後の30日死亡率の解析におけるHESの有用性を、先天性心疾患監査データベース(CCAD)の情報との比較において検証した。BMJ誌9月20日付オンライン版、10月13日付本誌掲載の報告。

人工妊娠中絶の世界的現況――MDG 5の達成に向けて

「人工妊娠中絶は現代の最高度の人権に関わるジレンマであるがゆえに、科学的かつ客観的な情報が必須である」と著者は記す。そして、「微妙な問題であるためデータソースが限られ、正確な情報の入手が困難」とも。 望まない妊娠の低減を目的とする指針の策定には、人工妊娠中絶数の情報が重要である。また、妊婦の罹病および死亡の主な原因は安全でない妊娠中絶であることから、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のひとつ「妊産婦の健康の改善」(MDG5)の達成に向けた進捗状況のモニタリングには危険な中絶の発生状況の把握も重要である。Guttmacher Institute(アメリカ・ニューヨーク市)のGilda Sedgh氏らは中絶率を世界規模で推計し、望まない妊娠や危険な中絶を減少させ安全な中絶を増加させる方策について考察を加えた。10月13日付Lancet誌掲載の報告から。

「2015年までに妊産婦死亡率を1990年の1/4に」は達成できるのか

 妊産婦の死亡はほとんどが回避可能であり、それゆえ国連のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals; MDGs、http://www.undp.or.jp/aboutundp/mdg/)のターゲットのひとつとなっている。これは、2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の1/4に減少させるというものだが、データの脆弱性のため進捗状況のモニタリングに問題が起きているという。 2006年、評価法の改善を推進するために新たなワーキンググループが設立され、2005年度の妊産婦死亡率を改めて推計し、1990年以降のトレンドの解析を行った。Harvard Center for Population and Development Studies(アメリカ、ケンブリッジ市)のKenneth Hill氏が10月13日付Lancet誌上で報告した。

小児喘息リスクは新生児期の細菌定着で増加する

小児喘息では一般に先行して、繰り返す喘息様症状=喘鳴(recurrent wheeze)がみられる。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らは、重度の繰り返す喘鳴を呈する幼児の気道に病理学的にみられる細菌定着と、喘息の起因との関連を示唆してきた。その関連を明らかにするスタディを実施。NEJM誌10月11日号に結果が報告された。

スタチン臨床試験WOSCOPSの延長追跡調査結果

スタチン(プラバスタチン)とプラセボとで比較した、英国スコットランド西部で行われた無作為化臨床試験WOSCOPS(West of Scotland Coronary Prevention Study)は、心筋梗塞の既往のない高コレステロール血症の男性6,595例を対象としたもので、平均追跡期間は約5年。冠動脈疾患および非致死性心筋梗塞の複合死亡が、スタチン群では7.9%から5.5%まで減少した(P