ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:293

脳卒中後後遺症に対するリハビリは、人的リハビリが最も優れる

脳卒中後後遺症を有する患者には効果的なリハビリテーション療法が必要とされるが、近年開発が進む、ロボット工学を活用したリハビリ・アシスト装置の効果は? 本論は、上肢後遺症患者のために開発された「MIT-Manus robotic system」(Interactive Motion Technologies社製)の運動機能改善効果を、通常ケアや強化訓練療法との比較で検討したもので、米国プロヴィデンス退役軍人医療センターのAlbert C. Lo氏らが行った。NEJM誌2010年5月13日号(オンライン版2010年4月16日号)掲載より。

カナダの冠動脈性心疾患死亡率低下、医療の進歩とリスク因子の減少が要因

カナダでは1994年以降、冠動脈性心疾患による死亡率が低下傾向にあるが、その要因として、内科・外科治療の進歩と、総コレステロール値の低下などリスク因子の減少にあることが明らかになったという。カナダSunnybrook Health Sciences CentreのHarindra C. Wijeysundera氏らが、地域住民を対象に行った前向きコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月12日号で発表した。

女性高齢者への年1回、高用量ビタミンD投与、転倒リスクを増大

70歳以上の女性高齢者に対し、高用量ビタミンDを年1回投与することで、転倒リスクが増大してしまうようだ。また投与後3ヵ月間の転倒リスクは、約30%も増加したという。オーストラリアMelbourne大学臨床・生化学研究所のKerrie M. Sanders氏らが、2,200人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月12日号で発表している。ビタミンD投与と転倒リスクについては、これまで発表された試験結果で議論が分かれていた。

心血管イベント抑制のための費用対効果に優れた戦略は?

心血管疾患予防のため、イギリス政府は40~74歳の全成人を対象としたスクリーニング戦略の実施を推奨している。その戦略と、ルーチンデータを用いて心血管リスクを層別化する(Framinghamリスクスコア、Cambridge diabetesリスクスコア、Finnish diabetesリスクスコアを用いる)戦略とでは、潜在するハイリスク患者を特定・治療することに、どれほどの違いがあるのかが検証された。ケンブリッジ・Addenbrooke's病院メタボリックサイエンス研究部MRC疫学部門のParinya Chamnan氏らによるモデルスタディによる。BMJ誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月23日号)掲載より。

救急外来の医師は小児の発熱を過小評価するも抗菌薬を処方

小児の救急外来受診で最も多い発熱について、5~10%で見逃されている重症細菌性感染症の診断を的確に行うための臨床モデルの開発が試みられた。オーストラリア・シドニー大学公衆衛生校のJonathan C Craig氏ら研究グループが、約16,000症例を前向きコホート研究により検討。BMJ誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月20日号)で発表している。

軟性S状結腸鏡の単回スクリーニング検査が、結腸・直腸がんの予防に高い効果

55~64歳の年齢層を対象に単回の軟性S状結腸鏡検査を行うと、結腸・直腸がんの発症および死亡が実質的に予防され、医療コストも抑制されることが、イギリスImperial College LondonのWendy S Atkin氏らが実施した無作為化試験で示された。結腸・直腸がんは世界で3番目に多いがんであり、毎年100万人以上が発症し、60万人以上が死亡しているという。2年毎の便潜血検査が早期発見や死亡率の抑制に有用なことが3つの無作為化対照比較試験で示されているが、結腸・直腸がんおよび腺腫の3分の2は軟性S状結腸鏡検査が可能な直腸およびS状結腸に発現するため、そのスクリーニング検査としての有用性に期待が寄せられている。Lancet誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月28日号)掲載の報告。

妊産婦死亡率の75%低減は2015年までに達成できそうか?

ミレニアム開発目標5(MDG 5、2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する。http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html)は、国によってばらつきはあるものの、その達成に向け大きく前進していることが、アメリカWashington大学のMargaret C Hogan氏らの調査で明らかとなった。妊産婦死亡は、「妊娠中、分娩時、出産後42日までの女性の死亡」と定義される。世界的に、妊産婦の死亡は医療制度上の主要課題であり、MDG 5に向けた医療資源の動員や、計画を立案しその進行状況を評価するには妊産婦死亡率およびその傾向に関する信頼性の高い情報が不可欠だという。Lancet誌2010年5月8日号(オンライン版2010年4月12日号)掲載の報告。

強化血圧コントロールの心血管イベント抑制効果:ACCORD

心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者に対する降圧療法の目標値を、135~140mmHg未満とする無作為化試験のエビデンスは、まだない。そこで正常収縮期血圧値(120mmHg未満)を目標とする強化血圧コントロール(強化降圧療法)を行ったが、イベント抑制効果は認められなかったことが、ACCORD試験から報告された。本論は、3月に行われた米国心臓病学会ACCで発表、NEJM誌2010年4月29日号(オンライン版2010年3月14日号)に掲載された。

心不全で入院の高齢者、退院後7日以内の再診で再入院リスクが低下

心不全で入院した高齢者に対し、退院後7日以内に外来再診を行うことで、再入院リスクが低下することが報告された。心不全患者の再入院は多いため、退院直後の外来による再診が重要であることは知られているが、その予防効果についての研究結果は再入院のデータが限られるなどしてほとんどわかっていなかった。本試験は、米国デューク大学のAdrian F. Hernandez氏らが、3万人超について行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月5日号で発表した。

糖尿病性腎症への高用量ビタミンB投与、尿細管濾過率低下、血管イベントリスクも増加

高用量ビタミンBを投与した糖尿病性腎症患者群は、非投与群に比べ、3年後の尿細管濾過率の低下幅が増大、血管イベントリスクも増加することが明らかになった。カナダ・西オンタリオ大学腎臓病部門のAndrew A. House氏らが、200人超を対象に行った試験の結果報告したもので、JAMA誌2010年4月28日号で発表した。

クラミジア検査で骨盤内炎症性疾患の予防は可能か

クラミジア感染症スクリーニングの実施で、PID(骨盤内炎症性疾患)の発病率を減らすことができるのか。ロンドン大学セント・ジョージア校地域保健科学部門のPippa Oakeshott氏らが無作為化試験を行い、BMJ誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月8日号)で報告している。クラミジア感染症は欧米で最も多い性感染症で、毎年新規患者は300万人以上。しかし症状に乏しいため放置され、PID発病を招くケースが少なくない。その医療コストは米国で年間20億ドル以上と推計されているという。

在宅後期高齢者への積極的な介護予防介入、効果は疑問

在宅ケアを受けていない高齢者に、積極的な介護予防を行うことが、健康長寿をもたらし、医療コスト削減に結びつくのか。カナダ・マクマスター大学看護学部のJenny Ploeg氏らが、機能低下リスクを有する75歳以上高齢者を対象に行った1年間にわたる無作為化試験の結果、通常ケア群とで有意差は認められなかったという。BMJ誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月16日号)掲載より。

新規糖尿病治療薬リラグルチドとシタグリプチン、血糖降下作用はどちらが優れるか?

メトホルミン単独では血糖値が十分にコントロールされない2型糖尿病患者において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬シタグリプチン(同:ジャヌビア、グラクティブ)に比べ糖化ヘモグロビン(HbA1c)の低下作用が優れることが、アメリカVermont大学医学部のRichard E Pratley氏らが実施した無作為化試験で示された。近年、2型糖尿病ではインクレチン系をターゲットとした治療が重要とされ、主なインクレチンホルモンとしてGLP-1とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)が挙げられる。GLP-1受容体作動薬がGLP-1の薬理活性を増強するのに対し、DPP-4阻害薬は内因性のGLP-1とGIPの濃度を上昇させるという。Lancet誌2010年4月24日号掲載の報告。

新規アンドロゲン受容体アンタゴニスト、去勢抵抗性前立腺がんで高い抗腫瘍効果と耐用性を確認

男性ホルモン阻害薬が無効となった去勢抵抗性の前立腺がんに対し、新規化合物MDV3100が高い抗腫瘍効果を示し、耐用性も良好であることが、アメリカ・スローンケタリング記念がんセンターのHoward I Scher氏らが実施した第I/II相試験で示された。MDV3100はアンドロゲン受容体へのアンドロゲンの結合を遮断し、リガンド-受容体複合体の核移行やコアクチベーター動員を阻害するアンドロゲン受容体アンタゴニストで、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、アゴニストとしての活性は持たないという。去勢抵抗性前立腺がんはアンドロゲン-受容体シグナル伝達に依存して持続的に増殖するため、このシグナル伝達をターゲットとする新たな分子標的薬を用いた内分泌療法の開発が進められている。Lancet誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月15日号)掲載の報告。

壊死性膵炎患者、低侵襲ステップアップアプローチで標準法よりも転帰改善

壊死性膵炎の患者に対し、低侵襲のステップアップアプローチを行うことで、従来の標準治療とされる開腹膵壊死部摘除術よりも、転帰が改善したことが報告された。ユトレヒト大学病院Hjalmar C. van Santvoort氏らオランダ国内7つの大学病院、12の教育病院が参加したオランダ膵炎研究グループによる多施設共同研究による。NEJM誌2010年4月22日号掲載より。

心血管リスクを有する耐糖能異常患者への速効型インスリン分泌促進薬:NAVIGATOR研究

経口糖尿病薬の1つ、速効型インスリン分泌促進薬ナテグリニド(商品名:スターシス、ファスティック)について、心血管疾患あるいは心血管リスクを有する耐糖能異常患者の糖尿病発症や心血管イベントを抑制しないとの報告が、NAVIGATOR研究グループによって発表された。同種の研究はこれまで行われておらず、本報告は追跡期間約5年、9,300名余を対象とした2×2二重盲検無作為化臨床試験により明らかにされた。NEJM誌2010年4月22日号(オンライン版2010年3月14日号)掲載より。

妊娠中の新型H1N1インフルエンザ発症、死亡率5%と高率

妊娠中に2009年流行の新型インフルエンザ(H1N1)に感染し発症した場合、死亡率は5%と高率であることがわかった。また、発症後2日以内に抗インフルエンザウイルス薬の服用を開始することで、入院リスクや死亡リスクは大幅に減少することも明らかになった。米国疾病対策センター(CDC)のAlicia M. Siston氏らが、妊娠中に新型インフルエンザを発症した800人弱について追跡し、明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月21日号で発表した。

砂糖など添加甘味料の摂取が多いと脂質代謝異常リスク増加

砂糖など、カロリーのある甘味料の摂取量が多いと、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値が低くなったり、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が高くなるなど、脂質代謝異常リスクが増加する傾向があるようだ。米国Emory大学のJean A. Welsh氏らが、6000人超の米国の成人を対象に行った調査で明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月21日号で発表した。添加甘味料と脂質値についての研究は、これが初めてという。

降圧薬+スタチンの降圧効果:PHYLLIS試験の2次解析

スタチンは、血清コレステロールの低減、また特異的(多面的)と思われる保護作用で心血管予防に寄与する。一方でいくつかの試験で、降圧効果も発揮するとの報告があるが、付加的防御機構として公表するには、試験に方法論的な限界があるともされている。そこでイタリア・Milano-Bicocca大学臨床・予防医学部門のGiuseppe Mancia氏ら研究グループは、以前に報告したスタチン併用による頸動脈の内膜-中膜厚の進行抑制を検討した試験PHYLLISから、24時間自由行動下血圧を基にした2次解析を行い、スタチンに付加的な降圧効果が認められるかを検討した。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月25日号)掲載より。