ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:339

プライマリ・ケア看護師が行うセリアック病の新スクリーニング法は有用

セリアック病は麦類の摂取を契機に発症するグルテンに対する腸管アレルギーであるが、症状が非特異的あるいは無症状のためプライマリ・ケアでは診断が困難である。血中の疾患特異的な抗体を検出するアッセイが開発されているが、高価なためスクリーニングの実施が困難で、ベネフィットも不明確との批判がある。 Ilma R. Korponay-Szabo氏(ハンガリー、デブレツェン大学医療・健康科学センター小児科)らは、セリアック病のスクリーニング法としてプライマリ・ケア看護師が実施可能な組織トランスグルタミナーゼ(tTG)に対するIgA抗体の迅速検査法を開発、そのfeasibilityおよび診断精度を評価する試験を実施した。BMJ誌12月15日号(オンライン版12月6日号)掲載の報告。

新開発の着用可能な血液透析機の有用性を確認

 透析あるいは腎移植を要する慢性腎不全患者は世界で約130万人に上る。これらの患者は、より頻回の血液透析を行えば生存率およびQOLの双方が改善される可能性があるが、イギリスにはそれを可能にするcapacityがほとんどないという。そこで、Andrew Davenport氏(ロンドン大学、Royal Free and University College Hospital Medical School)らは、新たな透析手段として着用して使用する透析機を開発、その安全性および有効性を評価するパイロット試験を実施した。Lancet誌12月15日号掲載の報告。

初のヒト顔面部分移植18ヵ月後のアウトカム

フランス・リヨン大学のJean-Michel Dubernard氏らは2005年11月27日、初めてとなるヒト顔面の部分同種移植術を女性患者に対して行った。患者は、同年3月28日に飼い犬に顔面を食いちぎられ、鼻、上下の口唇、頬、顎を失った38歳女性。レシピエントは脳死女性。その事実は2006年初頭にドナーも同席しての記者会見で公表され、世界中のマスメディアで報じられたのでご記憶の方もいるかもしれない。その移植後18ヵ月時点までの予後に関する報告がNEJM誌12月13日号に掲載された。

細菌性髄膜炎患者へのデキサメタゾン効果

 細菌性髄膜炎に対するデキサメタゾンの補助的投与が、成人に対して有効であるかどうかは明らかとなっていない。ベトナム・ホーチミン市にある国立熱帯病研究所病院Nguyen Thi Hoang Mai氏らの研究グループは、細菌性髄膜炎が疑われる14歳以上の患者435例を対象に、デキサメタゾンの無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。NEJM誌12月13日号より。  研究はデキサメタゾンの投与によって、1ヵ月後の死亡リスク、6ヵ月後の死亡リスクまたは障害リスクが低下するかどうかを目的に行われた。

rosiglitazoneが心血管リスクの増加に関連

2型糖尿病の治療に用いられるインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン系薬剤(TZDs)は、一方でうっ血性心不全、あるいは急性心筋梗塞のリスクとの関連が指摘される。本報告は、「コホートレベルで関連を調べた研究は少ない」としてTZDsとリスクの関連について後ろ向きコホート研究を行った、カナダ・オンタリオ州Institute for Clinical Evaluative Sciences のLorraine L. Lipscombe氏らによる研究報告。JAMA誌12月12日号掲載より。

新開発のクラミジア迅速検査により即日診断・治療が可能に

クラミジアの核酸増幅検査は、現在使用されている迅速検査よりも感度および特異度が優れるが、高価なため財源が限られた診療所は導入が困難だ。また、核酸増幅検査は結果が出るまでに1~2週間を要するため、治療の勧告やパートナーへの告知に支障が生じる。イギリス・ケンブリッジ大学診断法開発部門の研究グループは、医療財源が限定された状況を想定して非侵襲的な自己採取の膣スワブ標本を用いた新たなクラミジア迅速検査を開発した。 Diagnostics for the Real World(Europe) 社のLourdes Mahilum-Tapay氏らは、クラミジアの診断およびスクリーニングのツールとしての本法の有用性を評価し、BMJ誌12月8日号(オンライン版11月30日号)で報告した。

バクロフェンはアルコール性肝硬変患者の断酒推進に有効だ

アルコール性肝硬変患者の最も効果的な治療は「断酒」である。ここ数十年の間に、断酒や飲酒再発予防への作用効果が期待される薬がいくつか登場しているが、薬剤性肝障害などを引き起こす可能性が高いことから、薬理学的試験でアルコール性肝硬変患者の飲酒に関しては決まって対象外とされている。ローマ・カトリック大学内科のGiovanni Addolorato氏らは、γアミノ酪酸(GABA:脳や脊髄に存在するアミノ酸の一種で主要な神経伝達物質)受容体作用薬で、日本では抗痙縮薬として保険収載されているバクロフェンの、アルコール性肝硬変患者の断酒効果と安全性について臨床試験を行った。LANCET誌12月8日号より。

新規CETP阻害薬は血圧を上昇させない?

コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬はHDLを増加させるため、冠動脈イベント抑制作用が期待されていたが、torcetrapibを用いた大規模試験ILLUMINATEでは総死亡と心血管イベントリスクをプラセボに比べ有意に増加させていた。このtorcetrapib群におけるイベント増加の一因として血圧の上昇を指摘する声があったが、新規CETP阻害薬anacetrapibには血圧に対する悪影響はないかもしれない。Merck Research Laboratories(アメリカ)のRajesh Krishna氏らがLancet誌12月8日号で報告した。

喘息患者がディーゼル車から受ける呼吸器への影響

車の排気ガスによる大気汚染は重篤な健康被害をもたらす。そのリスクは呼吸器疾患を有する人にとってはより高まる可能性があることから、英国立心臓肺研究所(NHLI)のJames McCreanor氏らは、喘息患者を対象に、都市沿道での短期曝露でディーゼル車からどれぐらいの影響を受けるのかを調査した。NEJM誌12月6日号掲載報告から。

小児期の高BMIは成人期の虚血性心疾患リスクを増加

小児肥満症の蔓延は世界中で驚くべき早さで進行している。そうした中で、虚血性心疾患(CHD)の危険因子が肥満児においてすでに同定可能となっているが、小児期の過体重が成人期のCHDに及ぼす長期的影響の重要性についてはまだ明らかにされていない。その点について予防医学研究所(デンマーク・コペンハーゲン)のJennifer L. Baker氏らのグループが調査を行った。NEJM誌12月6日号より。

心肺フィットネスは高齢者の死亡予測因子

身体活動および有酸素能力のレベルは年齢と共に減少し、一方で肥満症の有病率は年齢と共に増大する傾向がある。それにもかかわらず高齢者の心肺フィットネスおよび肥満と、死亡との関連についてはこれまで十分に調査検討されていない。そこで、サウスカロライナ大学アーノルド公衆衛生学校(アメリカ)運動科学部門のXuemei Sui氏らが調査を行い報告した。JAMA誌12月5日号より。

急性副鼻腔炎には抗生剤、点鼻用ステロイドいずれも無効

急性副鼻腔炎はよくある臨床テーマで、抗生剤の投与に落ち着くのが一般的だが、その是非をめぐっては議論の余地が残っている。局所ステロイドのような抗炎症薬は有効性が期待されるものの、調査研究が十分に行われてはいないからで、英国サウサンプトン大学のIan G. Williamson氏らの研究グループが、急性副鼻腔炎に対するアモキシシリンとブデソニド(点鼻用)の有効性に関する臨床試験を行った。JAMA誌2007年12月5日号より。

「スパイ事件だから私は大丈夫」リトビネンコ事件後の健康リスク意識

2006年11月にロンドン中心部で発生したポロニウム-210(210Po)によるリトビネンコ氏毒殺事件後、ロンドン市民の毒物曝露リスクへの関心は低かったという。この事実は、公衆衛生にかかわる事故発生の最中に、一般市民にそのリスクの詳細を包括的かつ効果的に伝えることの重要性を改めて浮き彫りにした。 King’s College London(ロンドン大学)精神科のG. James Rubin氏らは、当該事件後に健康リスクに関する一般市民の意識調査を実施、公衆衛生学的な情報伝達(public health communications)の評価を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告から。

COPDの予後に対する医師の悲観的な予測が、必要な入院治療を損なう

イギリスでは毎年約3万人がCOPDで死亡している。COPDの増悪には人工呼吸器が有用だが、挿管にはICUへの入院を要する。一方、医師はICUに入院したCOPD患者の予後を必要以上に悲観的に予測する傾向にあることが示されている。入院は医師の予後診断によって決まるため、入院すべき患者が挿管のためのICU入院を否認されている可能性がある。 Northern General Hospital(イギリス、シェフィールド)のMartin J. Wildman氏らは、COPDの重篤な急性増悪に対する医師の予後診断と、実際の生存アウトカムを比較するプロスペクティブなコホート研究を行った。BMJ誌11月1日付オンライン版、12月1日付本誌掲載の報告。

イタリア北東部におけるチクングニアウイルス集団感染報告

チクングニアウイルスはヤブ蚊類(Aedes spp)の媒介によってヒトに感染する。1953年、タンザニアで単離されたのち、散発的な感染例や集団感染がアフリカ諸国、インド亜大陸、東南アジアから報告されている。数年前に西インド洋域のアフリカの島々など広範な地域で流行して以来、温帯地域の先進諸国からの旅行者が感染して帰国する例が多発している。日本では、昨年12月、一時帰国中のスリランカ在住の30歳代の日本人女性の感染が判明、国内で確認された初めての感染例とされる。 イタリア高等厚生研究所のG. Rezza氏らは、イタリア北東部地域で発生したヒトスジシマカ(Aedes Albopictus)の媒介によると思われる集団感染について報告した。Lancet誌12月1日号から。

コレステロール低値の脳卒中死リスクは必ずしも低くない

観察研究のメタ解析としては最も信頼性の高いProspective Studies Collaboration(PSC)が、血清脂質と心血管系イベントに関する解析をLancet誌12月1日号で公表した。虚血性心疾患死のリスクは予想通り、血清総コレステロール(TC)低値例で年齢を問わず低かった。一方、脳卒中死では、TC高値がリスクとなっていたのは、相対的若年者と収縮期血圧がほぼ正常である場合のみだった。

卵円孔開存と脳卒中の関連が高齢者でも

卵円孔開存の存在と原因が特定できない潜因性脳卒中との関連は明らかだが、先行研究は55歳未満の若年患者に関するもので、55歳以上の高齢患者についての関連は明らかとなっていない。 そこでフライブルグ大学病院(ドイツ)循環器科のMichael Handke氏らは、高齢患者でのエビデンスを求める検証を行った。NEJM誌11月29日号より。