ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:191

大手術後再入院患者、死亡リスクは?/Lancet

 大手術後の再入院について、手術を受けた病院へ再入院した患者の生存は、手術の種類を問わず改善していることが、米国・ユタ大学のBenjamin S Brooke氏らによる観察コホート研究の結果、明らかにされた。大手術後の再入院は一般的である。しかし、それら再入院患者のアウトカムが改善したのかどうか、受けたケアや、再入院先により違いはあるのかなどは不明であった。著者は、「今回の所見は、費用対効果の観点からの地域における手術施設の再編について重要な示唆を与えるものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年6月17日号掲載の報告より。

急性虫垂炎は抗菌薬で治療が可能か?/JAMA

 単純性急性虫垂炎への抗菌薬治療は、虫垂切除術に対して非劣性ではないことが、フィンランド・トゥルク大学病院のPaulina Salminen氏らが実施したAPPAC試験で示された。本症の治療では、1世紀以上にわたり手術が標準とされてきた。一方、近年、3つの無作為化試験や5つのメタ解析など、抗菌薬治療を支持するエビデンスが増えていたが、個々の試験には限界があるため、依然として標準治療は虫垂切除術とされている。JAMA誌2015年6月16日号掲載の報告より。

大腸内視鏡検診、がんの生涯リスクを抑制/JAMA

 大腸内視鏡による大腸がん検診では、腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が高いほど、大腸がんの発症や大腸がん死の生涯リスクが抑制され、費用は増大しないことが、オランダ・エラスムスMC大学医療センターのReinier GS Meester氏らの検討で示された。ADRは検診の質の指標とされるが、施術者によって3倍以上の大きなばらつきがみられ、最もADRが高い施術者に比べ最も低い施術者では、10年以内の大腸がんの発症リスクが約50%、がん死のリスクは約60%上昇するという。一方、ADRが高いと低リスクの小ポリープの検出が増加し、追加検査や合併症が増えるため、不利益が利益を上回る可能性が示唆されている。JAMA誌2015年6月16日号掲載の報告。

複合免疫不全症の遺伝子欠損を特定/NEJM

 複合免疫不全症からの早期発症の侵襲性細菌・ウイルス感染症を発症した小児について、常染色体劣性のdedicator of cytokinesis 2 遺伝子(DOCK2)の欠損を特定したことを、米国・ボストン小児病院のKerry Dobbs氏らが報告した。複合免疫不全症は、存在するT細胞の量的および機能的不足というT細胞免疫の先天異常を特徴とする。液性免疫障害も一般的にみられ、患者は重度の感染症または自己免疫疾患、あるいは両方を呈する。複合免疫不全症は複数のタイプがみられ、特異的な分子、細胞および臨床的特徴は不明のままであった。NEJM誌2015年6月18日号掲載の報告より。

中等度~重度の尋常性乾癬にトファシチニブが有望/Lancet

 中等度~重度の慢性尋常性乾癬に対し、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ、慢性尋常性乾癬に対しては未承認)の10mg1日2回投与はエタネルセプト(50mgを週2回)に非劣性であり、プラセボより優れることが示された。フランス・サンルイ病院のHerve Bachelez氏らが第III相の無作為化非劣性試験の結果、報告した。トファシチニブは、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬である。今回の検討では、トファシチニブの5mgまたは10mgの2種の用量について、高用量のエタネルセプトおよびプラセボとの比較が行われた。Lancet誌オンライン版2015年6月4日号掲載の報告より。

オピオイド服用中のBZD、過剰摂取死リスク増大/BMJ

 オピオイド鎮痛薬服用中のベンゾジアゼピン系薬投与は、過剰摂取による死亡リスクの増大と用量依存的に関連することが、米国・ブラウン大学のTae Woo Park氏らによる症例コホート研究の結果、報告された。また薬剤種別の検討において、クロナゼパムと比較してtemazepam(国内未承認)の同死亡リスクが低いことも明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告より。

障害生存年数の増加、主な原因は腰痛とうつ/Lancet

 188ヵ国を対象とした世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)2013の結果、世界的に高齢者人口が増加しており、また高齢者ほど疾患や外傷の後遺症を持つ人の割合が増加していることが判明した。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのTheo Vos氏らGlobal Burden of Disease Study 2013研究グループが、1990~2013年の188ヵ国の医療データをシステマティックに分析した結果、明らかになった。Lancet誌オンライン版2015年6月7日号掲載の報告より。

携帯GPS機能で心肺蘇生実施率が向上/NEJM

 携帯電話使用者の位置情報を瞬時に特定する携帯電話位置情報システムを使って、救急通報があった院外心停止が疑われる患者の近くにいる心肺蘇生(CPR)訓練を受けたボランティア市民に連絡し、現場への急行を依頼することで、“居合わせた市民(バイスタンダー)によるCPR実施率”が有意に上昇したことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMattias Ringh氏らが、二重盲無作為化比較試験を行い明らかにした。バイスタンダーによるCPRは、院外心停止患者の生存率上昇と関連することが示されている。NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。

心血管デバイスの承認申請書と公表論文を比較/BMJ

 米国・マサチューセッツ総合病院のLee Chang氏らは、最近承認されたハイリスク医療機器の心血管デバイスについて、米国FDAに報告された臨床試験の特徴および安全性、有効性に関する結果を調べ、ピアレビュー論文の同報告と比較した。その結果、臨床試験が未発表であるものが多く、発表されたものについても、試験集団、主要エンドポイントや試験結果が、FDAに提出されたデータとはかなり異なる可能性があることを報告した。これまでに、新規上市の医薬品については、臨床試験データにバイアスをかけた論文の発表が報告されている。医療機器については、臨床試験がどれほど選択的に報告されているのか明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告。

プレスリリースはFDA非承認内容を適切に報じているか/BMJ

 臨床試験のスポンサー(製薬会社)は、米国FDAが薬剤の市販申請を承認しない理由を伝える審査完了報告通知(complete response letter:CRL)の内容の多くを、プレスリリースには反映していないことが、FDA公衆衛生戦略解析事務局のPeter Lurie氏らの検討で明らかとなった。FDAは、規制機関がスポンサーからの市販申請を承認しないと決定した場合に、その理由をCRLでスポンサーに伝える。スポンサーは、CRLの内容を含むプレスリリースを公表してよいが、必須ではない。一方、これらのプレスリリースは、FDAの決定および非承認の論拠に関する公開された唯一の情報源となることが多いという。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告。

救急隊到着前の心肺蘇生で予後改善/NEJM

 スウェーデンでは、人口約970万人のうち300万人以上が心肺蘇生(CPR)の訓練を受けているが、その効果を疑問視する声があるという。今回、同国カロリンスカ研究所のIngela Hasselqvist-Ax氏らが調査したところ、救急隊(EMS)到着前のCPRにより院外心停止患者の30日生存率が2倍以上に向上していることがわかった。心肺停止患者のアウトカムの改善には発症から治療開始までの期間の短縮が重要であり、欧米のガイドラインでは、院外で可能な最も重要な措置は、心停止の発生を早期に認識して緊急電話を入れ、CPRおよび除細動を行うこととされる。研究の成果は、NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。

シタグリプチン追加で重症心血管イベント増加せず/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、通常治療にDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)を併用しても、重症心血管イベントは増加しないことが、米国・デューク大学のJennifer B Green氏らが実施したTECOS試験で示された。多くの2型糖尿病治療薬が承認されているが、一部の薬剤で心血管系の長期的な安全性に関して疑問が生じているという。米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)は、新薬に対し、血糖降下作用だけでなく臨床的に重要な心血管系の重篤な有害事象の発生率を上昇させないことを示すよう求めている。NEJM誌オンライン版2015年6月8日号掲載の報告より。

妊娠後期SSRI使用とPPHNリスクの新エビデンス/JAMA

 妊娠後期の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用は、新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)のリスク増大と関連するとのエビデンス報告が寄せられた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のKrista F. Huybrechts氏らが、全米の妊婦約379万例を対象とした大規模コホート研究において明らかにした。示された所見について著者は、「しかしながら絶対リスクは小さいものだった。またリスク増大は、先行研究での所見ほど大きいものではなかった」とも報告している。妊娠中の抗うつ薬SSRIの使用とPPHNリスクとの関連については、米国FDAが2006年にパブリック・ヘルス・アドバイザリとして「リスク増大の可能性」を発して以降、論争の的となっていた。JAMA誌2015年6月2日号掲載の報告より。

新規CETP阻害薬TA-8995、軽度脂質異常症に有効/Lancet

 新規開発中のコレステロールエステラーゼ転送蛋白(CETP)阻害薬TA-8995は、軽度脂質異常症患者への投与において忍容性は良好で、脂質やアポリポ蛋白に有益な効果をもたらすことが、G Kees Hovingh氏らによる第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告された。12週時点でLDLコレステロール値は、5mgおよび10mg用量の単独投与で45.3%低下、10mg用量+スタチン薬との併用投与では63.3~68.2%低下し、HDLコレステロール値は10mg用量単独で179.0%上昇、10mg用量+スタチン薬併用投与では152.1~157.5%上昇が認められたという。著者は、「示された所見が心血管疾患イベントの抑制をもたらすのか、心血管疾患をアウトカムとした試験を行う必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年6月2日号掲載の報告より。

進行扁平上皮NSCLC、ニボルマブで生存期間延長/NEJM

 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)で化学療法中または療法後に疾患進行が認められた患者に対し、ニボルマブ(本邦ではメラノーマを対象に商品名オプジーボとして承認)投与はドセタキセル投与に比べ、生存を有意に改善したことが示された。米国ジョンズ・ホプキンス病院シドニー・キメル総合がんセンターのJulie Brahmer氏らが行った無作為化非盲検国際共同第III相試験の結果、報告された。ニボルマブは、完全ヒト型抗PD-1免疫チェックポイント阻害薬IgG4抗体の新しい分子標的薬である。一方、既治療で疾患進行が認められた進行扁平上皮NSCLC患者への治療オプションは限定的で、研究グループは、NSCLCでは腫瘍細胞においてPD-L1発現が一般的であることから本検討を行った。NEJM誌オンライン版2015年5月31日号掲載の報告より。

palbociclib、内分泌療法後に進行した乳がんのPFS延長/NEJM

 ホルモン受容体(HR)陽性ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)進行乳がんで、ホルモン療法を受けたが再発や進行を認めた患者に対し、palbociclib+フルベストラント(商品名:フェソロデックス)投与は、フルベストラント単独と比べて無増悪生存期間を有意に延長した。英国・王立マーズデン病院のNicholas C. Turner氏らが521例を対象に行った、第III相プラセボ対照無作為化比較試験の結果、示された。HR陽性乳がんの増殖は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4および6に依存している。palbociclibはCDK4とCDK6を阻害する経口分子標的薬である。NEJM誌オンライン版2015年6月1日号掲載の報告より。

急性冠症候群へのスタチン+エゼチミブの有用性/NEJM

 急性冠症候群(ACS)の治療において、スタチンにエゼチミブを併用すると、LDLコレステロール(LDL-C)値のさらなる低下とともに心血管アウトカムが改善することが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristopher P Cannon氏らが実施したIMPROVE-IT試験で示された。スタチンは、心血管疾患の有無にかかわらず、LDL-C値と心血管イベントのリスクの双方を低減するが、残存する再発リスクと高用量の安全性に鑑み、他の脂質降下薬との併用が検討されている。エゼチミブは、スタチンとの併用で、スタチン単独に比べLDL-C値をさらに23~24%低下させることが報告されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月3日号掲載の報告。

全周追加切除で早期乳がんの再手術が減少/NEJM

 乳房部分切除術後に切除腔の組織を全周的に追加切除すると、追加切除を行わない場合に比べ断端陽性率が改善し、再手術率が半減することが、米国イェールがんセンターのAnees B Chagpar氏らの検討で示された。早期乳がん女性の多くが乳房部分切除術による温存治療を受けており、全摘出術と同等の生存率が達成されている。一方、部分切除術後の断端陽性率は約20~40%とされ、この場合は局所再発を回避するために再手術を行うことが多い。NEJM誌オンライン版2015年5月30日号掲載の報告より。

問診のみで5年以内の死亡を予測可能?50万人の前向き研究/Lancet

 身体的な検査を行わなくても、通常の問診のみで得た情報が、中高年者の全死因死亡を最も強力に予測する可能性があることが、英国のバイオバンク(UK Biobank)の約50万人のデータを用いた検討で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAndrea Ganna氏とウプサラ大学のErik Ingelsson氏がLancet誌オンライン版2015年6月2日号で報告した。とくに中高年者の余命を正確に把握し、リスクを層別化することは、公衆衛生学上の重要な優先事項であり、臨床的な意思決定の中心的課題とされる。短期的な死亡に関する予後指標はすでに存在するが、これらは主に高齢者や高リスク集団を対象としており、サンプルサイズが小さい、リスク因子数が少ないなどの限界があるという。

強化血糖降下療法の長期追跡結果~VADT試験/NEJM

 2型糖尿病に対する5.6年の強化血糖降下療法により、心臓発作や脳卒中などの主要な心血管イベントが、治療開始から約10年の時点で有意に抑制されたことが、VADT試験の長期の追跡調査で確認された。米国退役軍人省(VA)アンアーバー健康管理システムのRodney A Hayward氏らが報告した。本試験の終了時の解析(追跡期間中央値5.6年)では、強化療法と標準治療で主要心血管イベントの改善効果に差はないとの結論が得られていた。本試験を含む4つの主要な血糖コントロールに関する大規模試験のうち、最も追跡期間の長いUKPDS試験では強化療法で心血管イベントの改善効果が示され、ACCORD試験でも最近、非致死的心血管イベントが改善されたとの報告(死亡率の上昇でベネフィットは消失)があるが、ADVANCE試験では心血管イベント、死亡とも改善されておらず、厳格な血糖コントロールの是非という最も重要な課題は未解決のままである。NEJM誌2015年6月4日号掲載の報告。